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サステナビリティ報告の信頼性を高めるアシュアランス:最新動向と実践ポイント

Tags: サステナビリティ報告, アシュアランス, ESG開示, 信頼性, 保証

サステナビリティ報告の信頼性を高めるアシュアランス:最新動向と実践ポイント

近年、企業が発信するサステナビリティ関連情報の重要性が増しています。投資家、顧客、従業員など、様々なステークホルダーが企業の非財務情報に注目し、意思決定の参考にしています。しかし、情報が氾濫する中で、その「信頼性」が問われるケースも少なくありません。

そこで重要となるのが、「アシュアランス(Assurance)」、すなわちサステナビリティ報告書に第三者による「保証」を付与することです。アシュアランスは、報告された情報が正確かつ網羅的であり、適切な基準に基づいて作成されていることを外部機関が独立した立場で検証し、意見を表明するプロセスです。これにより、報告書の信頼性が飛躍的に向上し、企業の透明性や説明責任が強化されます。

本稿では、サステナビリティ報告におけるアシュアランスの基本的な考え方から、その種類、プロセス、最新動向、そして企業が実践する上での重要なポイントについて解説します。

なぜサステナビリティ報告にアシュアランスが必要なのか

サステナビリティ報告は、企業の環境、社会、ガバナンス(ESG)に関する取り組みやパフォーマンスを開示するものです。その情報の信頼性が低い場合、以下のような問題が生じます。

アシュアランスは、これらのリスクを低減し、報告書の信頼性を高めるための効果的な手段です。これにより、企業はステークホルダーとのコミュニケーションを強化し、企業価値向上につなげることができます。

アシュアランスの種類:限定的保証と合理的保証

サステナビリティ報告のアシュアランスには、主に二つのレベルがあります。

  1. 限定的保証(Limited Assurance):

    • これは一般的に実施されるアシュアランスのレベルです。
    • 保証機関は、重要な虚偽表示がないことを疑わせる事項が発見されなかったという結論を表明します。
    • 限定的保証を得るためには、主に質問、観察、分析的手続といった限定的な手続が実施されます。検証の範囲や深さは、合理的保証に比べて限定的です。
  2. 合理的保証(Reasonable Assurance):

    • 監査における財務諸表監査に近い、より高いレベルの保証です。
    • 保証機関は、重要な虚偽表示がないという積極的な結論を表明します。
    • 合理的保証を得るためには、限定的保証よりも広範で詳細な手続(例:サンプル抽出による検証、第三者確認など)が実施されます。

どちらのレベルを選択するかは、企業の目的、開示範囲、コスト、ステークホルダーの期待などによって異なります。現状では限定的保証が多く採用されていますが、開示規制の強化に伴い、将来的には合理的保証が求められる範囲が拡大する可能性があります。

アシュアランスのプロセス

アシュアランスのプロセスは、以下のステップで進行するのが一般的です。

  1. 準備段階:
    • 企業はアシュアランスの範囲(対象となる開示情報、期間など)を決定します。
    • 信頼できる外部保証機関(監査法人など)を選定し、契約を締結します。
  2. 計画段階:
    • 保証機関は、企業のリスク評価や内部統制の理解に基づき、保証計画を策定します。
    • 保証基準(例:ISAE 3000、AA1000 ASなど)に沿って手続を設計します。
  3. 実施段階:
    • 保証機関は、計画に基づき、データの収集、計算、開示内容の適切性などを検証します。
    • 関連部署へのヒアリング、関連証憑の閲覧、データ分析などを実施します。
    • 企業は保証機関からの質問に対応し、追加資料を提供します。
  4. 報告段階:
    • 保証機関は検証結果に基づき、アシュアランス報告書を作成します。この報告書には、保証の範囲、実施した手続の概要、そして結論(保証意見)が記載されます。
    • 企業はこのアシュアランス報告書をサステナビリティ報告書に含めて開示します。

このプロセスを通じて、企業は報告情報の正確性に対する客観的な評価を受けるとともに、データ収集プロセスや内部統制における改善点を特定することができます。

最新動向と実践におけるポイント

サステナビリティ報告のアシュアランスに関する最新動向として、以下の点が挙げられます。

これらの動向を踏まえ、企業がアシュアランスを効果的に実践するためには、以下のポイントが重要です。

まとめ

サステナビリティ報告におけるアシュアランスは、単なる形式的な手続きではなく、報告情報の信頼性を飛躍的に高め、ステークホルダーとのエンゲージメントを強化し、ひいては企業の持続的な成長と企業価値向上に貢献する重要な取り組みです。

規制による義務化の動きが進む中で、企業はアシュアランスを経営戦略の一環として捉え、計画的な準備と内部体制の整備を進めることが求められます。信頼性の高いサステナビリティ報告を通じて、企業は社会からの信頼を獲得し、競争優位性を確立していくことができるでしょう。